おかあさん

私のおかあさんは、5月頭に入院先の病院で脳梗塞で倒れました。
倒れてすぐに主治医に発見されたのですが、右半身麻痺で
言語障害をおこしてました。

おかあさんは一時は車いすに乗るまで元気になりましたが、
先月から体調を崩し、日に日に体が小さくなってます。

私が小さい頃は、魚市場の事務員として働き、朝3時には
出勤するので、朝目が覚めると父や祖母がご飯を作って
おかあさんの姿はありませんでした。
おかあさんにに会えるのは学校から帰った時。
でも仕事で疲れていていつも寝ている姿か、刺青の彫師である
父の仕事柄、いろんなパーティーに出かける時の姿でした。

中学生に入ってすぐに父と祖母が亡くなり、父の1周忌に
おかあさんは体調を崩して倒れました。
1年位入院し、その間子供達は自分でご飯を作り、水道代や
電気代やガス代を払い、自立した生活をしてました。
中学を卒業するくらいにおかあさんは家に帰ってきました。

人工透析を20年来行い、元気だったおかあさん。
いま、手術した傷口から細菌が入り、40度以上の熱を出して
寝込んでいます。
今日、主治医から、非常に危険な状態であるという噺と延命措置に
ついての話がありました。
脳梗塞で倒れてすぐの時、家族で話し合ってたのですが、
無理やり命を長らえるより少しでも苦しまず、楽にしてあげたい
家族全員の意見でした。
この答えを今日主治医に話をしなくてはいけないということは、
さよならをする時がだんだんと近づいてきたのかと思うと悲しく
なります。

おかあさんは、母親であるおばあちゃんが亡くなった時
「いままで育てて頂きありがとうございました。あなたの娘で
生まれてきてしあわせでした」
とお礼を述べました。
私が実際、おかあさんの立場になった時、きちんとおかあさんに
お礼が言えるだろうか。

お礼が言えるようになるまで、おかあさんどこにも行かないでください。
そして、おとうさん、おばあちゃん、生まれてすぐに亡くなったおねえちゃん
おかあさんをまだ連れて行かないでください。
子供たちに親孝行をもう少しさせてください。
そう引き止めてしまいます。